OPINEL(オピネル) カーボンナイフ #8 黒錆加工

電脳職人

2014年07月11日 20:59



OPINEL(オピネル)のフォールディングナイフは、1890年フランスで原型が生まれて以来、基本的なデザインをほとんど変えることなく現在に至ります。

中学生時代、何に使うというわけではなかったのだけれど、登山好きの兄を持つ同級生に見せびらかされて以来魅せられてしまい、Esbitのポケットストーブとほぼ同時期、なけなしの小遣いを叩いて購入しました。

同級生数名も購入し、ただただ研いでは切れ味自慢をすることに終始、確か最後に使ったのはウグイを釣りに行き、川原で焼いて食べようとした時、ちょっとしたエピソードがあるのだけれど、それはいつかの機会にすることにして、それ以降の記憶が全くありません。

その後社会人になり、バイクツーリング時に使おうと買い、散々使い倒して最後は帰郷する際にどこかへやってしまったようです。

何しろ30年以上も前から馴染みがあるナイフですが、いまだに魅了して止まず、今回新調することにしました。

様々なサイズがありますが、定番中の定番とも言える#8、僕の手には#9くらいが丁度良いのですが、お客さまや仲間に実際手に取り、使ってみてもらうのには、やはり定番サイズが一番でしょう。何より小柄なパートナーのかえでには、このサイズでも充分大きく感じるはずです。

フランスの肥後の守(ひごのかみ)と称される事が多いOPINEL、刃物が好きな方は肥後の守といえばピンとくる方も多いと思いますが、思い浮かばない方もいらっしゃると思うので、画像を掲載しておきます。






やはり中学生時代、安物の類似品を使っていたところ、親父が「こんな物は肥後の守じゃない」と、出張に行った先で買い求めプレゼントしてくれた物です。
こういう経験は一澤帆布店のバッグとこれくらいしか記憶が無く、今にして思えば何か思い入れがあったのかもしれず、もう少し対話を持っておけば良かったと思います。

竹に虎が価値があるとか、本物は登録商標を打刻してあるとか、色々話していたのですが、興味の多くはOPINELとどちらが切れるか、研いだらどの位切れるようになるかといったことでした。

この二つを同じ土俵に並べるというのは、実際問題無理があると思え、繊細なカットをするときはOPINE、刃こぼれを気にせずガンガン切りたい時は肥後の守といった具合に使い分けていた通り、フィーリングは全く違うものです。

強いて共通点を見つけるならば、そこそこリーズナブルで、同じくらいの大きさで、とても扱いやすく研ぎやすい、そんな所でしょうか。一言で括れば気取らない庶民的なナイフという感じです。

さて、OPINELの話しに戻します。

最近は刃先が丸い物や、刃にギザギザが付いていて、ロープが滑らず切りやすいアウトドア用などもありますが、昔ながらのフォールディングナイフには、刃がハイカーボンスチール(高炭素鋼)とステンレスの物があります。

一長一短ですが、端的に言えば、研いだりメンテナンスする楽しみ、要するに育てている感はカーボン刃、手間が掛からず誰でも気軽に使えるのがステンレス刃ということになります。

カーボン刃はきちんと研ぐと素晴らしい切れ味で、研ぎの練習にも使えます。お子さんたちに親父としてナイフを贈ることがあったら、最初のナイフは是非肥後の守かOPINELにと思います。

さて、そのカーボン刃ですが、最大の難点はちょっと油断すると錆びてしまうことです。

沢山の方たちが手掛け、様々なブログにも掲載されているので、何を今さらという感もありますが、他にも手を加えたい所がありますので、黒錆加工について掲載しておこうと思います。

簡単に言うと黒錆びで予め被ってしまうことにより、赤錆の発生を抑えようというものです。
モデルガンを黒くする時に使ったりする黒染液なんて物もあり、ムラになり難く、キッチリ黒くなりますが、食品を切ることも多いですし、何よりも手軽でリーズナブルに加工したいので、紅茶とお酢を使う一般的な方法をとります。



先ずはブレードを綺麗にします。

よくよく見ると、こびり付いた油や、既に出来てしまった錆などがありますので、念入りに綺麗にします。
一番肝心なのがブレードの脱脂、塗装もそうですが黒錆加工も、油が付いているとはじき飛ばしてしまい、仕上がりにムラが出たり、指紋の形がくっきり浮かび上がったりします。

シリコンオフを使う方が多いようですが、僕はIPA(イソ・プロピル・アルコール)の方が好きで、拭き上げると短時間で揮発してくれるので、悪さをすることも皆無といえるからです。



ブレードが浸かる深さの容器、ガラスを使う場合は耐熱にしておくのが無難です。

420ccの水を沸騰させ、ティーバッグを3個入れて軽く煮立たせ、タンニンをしっかり絞り出します。
そこへお酢を180cc、要するに紅茶7:お酢3という先人が使っている一般的な比率なのですが、実際のところ紅茶の濃度の違いもありますし、あまり厳密でなくても何とかなるものです。

この加工をOPINELに施すのは初めてですが、錆びまくったダッチオーブンのリセットを始め、鉄を使った工具や調理器具では散々やってきた手法、かなりアバウトでも失敗したことは無く、脱脂さえきちんと行われていればソツ無く仕上がります。



魔女になった気分でOPINELをドボン

ブレードを外して加工する方もいらっしゃるようですが、僕にはそれをする意味が全く理解できません。ただ手間を掛け、カシメてあるピンをダメにするだけのように思えます。

実際加工してみても、ステンレスは変色しませんので、ロックリングはピカピカのままです。液を柄が吸い込んでしまいますが、乾いてしまえば何でもないですし、人体に有害な物でもありません。



ブクブクと泡が立ち、一分もすればこんなに黒くなっています。



泡が出て居ている様子、結構激しく出ますので、ムラなく綺麗に仕上げたい方は、液をケチらず多めに作り、時々撹拌し、状況によってはブレードを拭いてもう一度入れるなどしてください。



10分経過、液の色も随分変わってきました。



これで完了!としても良いくらいです。



折角多めに作りましたので、液を入れ換えてもう一度。
泡の立ち方が緩慢というかほとんど出ません。それでももう一息…



20分経過、拭き上げて完了です。とても綺麗に仕上がりました。

さて次は、オリーブオイルに漬けようか亜麻仁油に浸けようか。

おっと、その前にしておきたい事が。



ひとまず完成画像を掲載しておきます。


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